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創刊号

NPOなら人権情報センター NEWS

創刊号(2008年5月10日)
 
-没20年・米田富先輩を偲ぶ集い-(5月4日)
米田富翁記念碑前で運動の新たな転換を誓う

 
私たちにとってかけがえのない米田富先輩が逝去されてちょうど20年を迎える節目となる日にあたって、8年前にみんなで建立した米田富翁記念碑前で「没20年・米田富先輩を偲ぶ集い」を呼びかけ開催。米田富先輩を偲び各支部の同盟員が寄り集まった。
あいさつに立った中川俊之なら人権情報センター理事長は、「米田富先輩は全国水平社創立以来の人間解放をめざした運動が、今日のような大変ぶざまな状況 を憂い、ずっと嘆いてこられた。幾多の権力の弾圧にもめげず運動の中で犠牲となった多くの先輩にも恥ずかしい思いがしてならない。今こそ、その精神を真に 受け継ぎ引き受けていく運動が最も求められている。」とあらたな運動への決意を示した。そして 全員で「解放歌」を合唱。日程を聞いて急遽かけつけていた だいた吉野晴夫五條市長より挨拶をいただいた。
この後、水平社創立大会当日、米田先輩自身が「決議」を朗読し提起した経緯にちなんで、その「決議」文を森田浩司君(上但馬支部)が朗読。創立大会当日の米田富先輩の水平社運動にかける思いを一人ひとりの心に蘇らせこれを確認した。
次に山下力県連理事長が「集会宣言-あらたな運動にむけた決意-」を朗読して提案。これを全員で確認。
この集会宣言では、「部落内外の実態較差を差別と規定し、この較差の是正を行政に求める交渉は行なわない。部落民自身の内なる差別意識や部落内に現存する 様々な差別問題を隠蔽しながら展開してきた糾弾闘争を放棄する。融和運動と袂を分かった86年前の当時の決意と寸分たがわず解放同盟の運動とは決別す る。」と宣言し「差別や人権侵害に対して『異議申立て』し合える人権文化を創り、部落内外の共通する生活課題である、子育て支援、『障害者』支援、高齢者 支援等に部落内外の人々が共同で取り組み、『響き合い・重なり合う』感性の広がりと深まりを通じて懸案の『しこり』をほぐしていくことを誓い合った。
最後に、但馬義雄副理事長の発声で力強く団結ガンバローを行ない偲ぶ集いを終える。
 
 
 
全国水平社創立大会決議
 
一、 我らに対し穢多及び特殊部落民等の言行によって侮辱の意思を表示したる時は徹底糾弾を為す


一、 全国水平社本部に於いて我等団結の統一を図る為、月刊雑誌「水平」を発行す


一、 部落民の絶対多数を門信徒とする東西本願寺が、此際我々の運動に対し抱藏する赤裸々なる意見を聴取しその回答により機宣の行動をとること。


右決議する

                                            大正十一年三月三日  全国水平社創立大会
 
 
 
集 会 宣 言
 
-あらたな運動にむけての決意-
本日5月4日は、私たちにとってかけがえのない米田 富 先輩が逝去されてから、ちょうど二十年となる節目の日であります。いまもなお、米田先輩を解放運動の先人と敬い続ける活動家が、八年前にみんなで建立した この「米田 富 翁記念碑」のまえに集いました。今日の運動の状況を報告し、この間、論議・検討してきた新たな運動への大転換の決意を記念碑の前で誓い合うためです。
米田先輩。あなたは「部落解放は部落民の自覚に始まり、自覚に終わる」とくりかえし、語り続けておられました。しかし、「特措法」によって膨大な同和対 策事業が実施されるにともなって、さまざまな利権が生じ、利権を追い求める動きも目立つようになった頃、「これでは、部落解放運動を名乗りながら、解放運 動とは縁のないことだ」「気がついたころには、もうここまで来てしまっている。もうどうしようもない。こんな悲惨な状態を見て死ぬというのは、いかにも情 けない」とつぶやかれていた、晩年のあなたの絶望の深さを知っています。そばにいた私たちは歯ぎしりしていました。
米田先輩。あなたが逝去されて五年後、いまから十五年前に私たちは川口グループと袂を分かち、「モノや金で人を支配するのではなく、人間としての尊厳を 確かめ合える、本当に人間が信頼できる運動をつくりあげ」「自立と連帯に基づく自主解放の運動」をたちあげたことはすでに報告してきたところであります。 同対審「答申」路線と決別しました。かつて、「あんなところに生まれなくてよかった」「あんなところには移り住みたくない」と揶揄された劣悪な生活実態は なくなっています。若者層の9割近くが部落外の人と結婚している現実が生み出されているのに部落差別は残存しているのであります。
このとき、私たちの周辺を冷静に見わたすと、部落の内でも外でも生活格差が拡大し、生活困窮者が増大しています。年収100万円余のフリーターが330 万人、年収200万円余の非正社員が就労人口の三分の一を突破してしまいました。また、10年前に60万世帯であった生活保護家庭は150万世帯を超え、 離婚が増えて母子家庭も120万世帯に達しています。家族関係や地域共同体が破壊され、人心が荒んできたからでしょうか、子どもらの間で「いじめ」や不登 校があとを絶たず、児童虐待やDV,高齢者虐待等の相談が急増しているのであります。しかしながら、この厳しい現実に部落解放運動が的確に対応するすべを 持ち合わせてきたでしょうか。悔しいけれども、否と言うしかありません。
米田先輩。あなたの碑の前で、厳粛にお誓いします。私たちは、忌まわしい差別からの解放の願いを込めて続けてまいりました部落解放同盟の運動とお別れし ます。この私たちの決意は、いまから86年前に融和運動と袂を分かち水平社を創立された先輩方々、なかんずく米田先輩のその当時の決意と寸分違いありませ ん。私たちは変わります。これまでの、部落内外の実態格差を差別と規定し、その格差の是正を行政に求める行政交渉をいたしません。部落問題を様々な差別や 人権問題の優先課題と位置づけ、部落民自身の内なる差別意識や部落内に現存する様々な差別問題を隠蔽しながら展開してきた糾弾闘争を放棄します。私たちは 変えていきます。差別や人権侵害に「異議申し立て」しあえる人権文化を創ります。部落内外で共通する生活課題である、子育て支援・障害者支援・高齢者支援 等に部落内外の人々が共同でとりくみ、「響きあい・重なり合う」感性の広がりと深まりを通じて懸案の「しこり」をほぐしていきます。
いま改めて、米田先輩に誓います。この碑に刻まれた「運動は自己変革から始まるもんや。だから、自己には厳しく運動には誠実にと、わたしは闘い続けてきた」というこの文言を私たちの座右の銘として新しい運動を胸張って推し進めていきます。
                                                                                                          
2008年 5月 4日
                                                                           「没20年・米田富先輩を偲ぶ集い」参加者一同
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