人権はヨーロッパ＝キリスト教文化圏で生まれた新しい概念です。当初はアジアやアフリカの人々、働く人たち、女性や子どもたち、障害を持っている人たちなどは人間とみなされていませんでした。

しかしドイツや日本の戦争責任をはじめ世界大戦の反省の話し合いから、平和の基本は「あらゆる人間は人間らしく生きる権利があることを地球上のすべての人が確認しそのために行動することではないか」とまとめられました。そして国連における世界人権宣言として結実してきたのです。画期的なことではありますが、条文だけで人権が守られるわけではないのです。一人ひとりの営みが大切です。

人間は一人では生きていくことができません。傷つけたり傷つけられたりしながら生きています。私たちは人権というものを「人と人との関係で生じる軋轢に多様に対処し豊かな人間関係へと生みなおしていくこと」だと考えています。

同和対策事業特別措置法の制定以降の30余年間に、国と地方公共団体は13兆円を超える公的資金を投入し、いわゆる部落とその周辺との間にあった生活実態面での格差をほぼ解消させてきました。また、学校教育や社会教育の中だけでなく企業内や職場でも同和教育・同和研修が頻繁に取り組まれ一定の成果をあげました。

しかし、部落（部落民）への偏見と差別的対応は執拗に続いています。行政や教育関係者のみならず、われら運動体もボタンのかけ違いをしてきたようです。ここに、これまでの1965年同和対策審議会「答申」をバイブルとする運動方針を根本的に見直し、国連の提唱するところの「人権という普遍的文化を構築するためにおこなう人権教育」に展望を託すことにしました。

そこで、「部落差別をはじめ一切の差別のない世の中」などというユートピア願望を捨て切ることとしました。部落民であれ、誰であれ、人は時に差別されたり、また、差別したりするものであり、また、部落差別問題は性差別や「障害者」への差別等々、他の差別問題や社会矛盾とからみ合って存在しているものであるとの基本的立場と基本的認識を大切にするようにしました。
そのうえで、差別的言動に出会ったときにとりあえずは「異議申立て」ができる知識と技術及び態度の涵養を目標とし、また、組織団体として社会的信頼を得るために特定非営利活動法人としてこのセンターを設立するものであります。

これまでの部落解放運動の豊富な経験を生かして21世紀を人権の時代にする壮大な試みの一端を担えれば幸いです。